おにいちゃんの物語
おにいちゃんの物語
2010年07月08日10:13
❁✿✾ ✾✿❁︎これは、娘が生まれた頃に書いたエッセイです。
ずいぶん前のmixiの日記に書いたのをコピペしました。
「来年は４人家族だね」
嬉しそうに夫が言った。
そう、おにいちゃんになるんだよ。
だから、なんでも１人でできるようにならなきゃ。
息子は三歳。
食が細くやせっぽち。
プリンを主食とする。
意志表示は笑うか泣くか。私のことはわかるらしくてとびきりの笑顔になる。
息子はダウン症。
私はこの事実をどうしても受けとめることが出来なかった。
身体に障害があっても知恵おくれでなければ社会に貢献できる
父は、孫だと認めてくれなかった。
まさに偏見。
子どもは親を選べない。
このおかあさんなら大丈夫とあなたは選ばれたんだから
本には書いてあるけど
どうして私なの？
毎日毎日泣いてばかりいた私。
現実をようやく受けとめることができた頃妊娠した。
少しは成長してるのかなと思いながら息子を連れて買い物に行くと
バナナの前で
両手を前に出して、手のひらを上に向けた。
とびきりの笑顔。
初めての意志表示。
やっぱりおにいちゃんになるんだよね。
えらいよ。
息子なりに少しずつ成長しているのだ。
７月８日。
おにいちゃんは
早朝、たった１人で旅立った。
心臓疾患を持っていたから覚悟はしていたけれど
あまりに急で気持ちの整理がつかなかった。
障害を持った我が子。
綺麗事ではすまされない現実があり、色んなことがあった。
なんでこんな子産んだんだ！親戚の縁談まで影響する。そんなことを父に言われ、私はそんなに悪いことをしたのだろうかと自分を責めた。
息子が私に教えてくれたことは人に対する優しさやおもいやり、言葉にできないほどのことだった。
息子の出産で私の人生も大きく変わった。
私は息子を生んでよかったと心から思う。
たしかにつらい出来事。
五体満足で生まれることを願わない人はいないだろう。
あれから２０年、いまでも息子そっくりのダウンちゃんを見つけると必ず声をかけてしまう。
おにいちゃん。
元気にしてますか？
いまでも、
とびきりの笑顔で
おかあさんをみてますか？
おかあさんが、会いに行く日まで
その笑顔でみていてくださいね。
２月1日。
おまえが４歳になる日、私は再び母になった。
おまえの生まれ変わりの妹は、元気で活発な娘に成長しました。
今日は家族で
おにいちゃんに会いに行きます。
プリンとバナナを忘れずに。
